第109章 卑劣な手段

有村菜津美は、わざと困ったような表情を作った。瞳には涙をたたえ、今にもこぼれ落ちそうで――守ってやりたくなるほど儚い。

けれど彼女がここまで言うのは、要するに駆け引きだ。

わざと距離を置くことで、かえって相手の気を引こうとしている。

同時に、藤原和樹の腹の内を探ってもいた。

自分をどれほど想っているのか。どこまで本気なのか。

藤原和樹は、もう彼女の掌の上で転がされている。

これが、有村菜津美の仕掛けた罠――いや、美貌を武器にした駆け引きだった。

そもそも藤原和樹と有村菜津美が初めて出会ったあの日ですら、彼女が仕組んだものだったのだから。

「菜津美、さっきの話なんて俺はどうでも...

ログインして続きを読む